軽率に会社を設立してみた

ひとり合同会社を設立してみました。

なんで?

「ソースコードの一行一行は、経営判断そのものだ。」という好きなフレーズがあります。とあるブログ記事の書き出して、ざっくり要約すると、プログラミングの過程においては常になんでこう書いたのか?読みやすさとかパフォーマンスとかトレードオフすべき都合があって、なにを優先すべきか?の判断がなされているはずで、それはつまり経営判断だよね、という内容です。

昨年執筆した「メタエンジニアリング 理論と実践、そして未来」という同人誌でも、このフレーズを引用させてもらいました。文中には「経営とメタエンジニアリング」という章を設け、メタエンジニアリング(つまりエンジニアとエンジニアリング組織への投資)と経営の関係について考察しています。

過去、エンジニアリングと経営の板挟みになった経験は(程度の大小こそあれ)何度もありました。ですが、本来経営とエンジニアリングは対立軸にあるわけじゃないし、あっちゃいけないですよね。有名なこの図で予想された「2020s」は、すでに現実のものとなっています。

ところが残念なことに、ぼくはキャリアにおいて会社経営に携わったことがありません。副業の個人事業主なんかとはぜんぜん重みが違うんだろうなーなどと思いつつ、どちらかというと被雇用者の立場で仕事をしてきたのでした。

なんとなくうっすらと「これじゃいかんなー」などと思っていたところで、とある企業をパートタイムでお手伝いする機会をいただきました。経営者の方に直接エンジニアとは、エンジニアリング組織とは、とお話しさせていただくなかで、これはやはり「経営」ってものを一度はやってみる必要があるな、という気持ちになったのでした。

これ一本でやっていくぞ、独立するぞ!というわけではないのですが、零細ひとり法人であっても「経営」というものを経験することで解像度を高め、自分の仕事でもお手伝いの仕事でもより効果的にできるようになってやろう、というのが目的です。

なにするの?

定款にはこう書きました。

  1. インターネットを利用した各種情報提供サービス
  2. コンピュータシステムの企画、開発、販売及び保守に関する業務
  3. 各種アプリケーションソフトの企画、制作、販売、運営及び管理
  4. 経営コンサルティング業務
  5. 人材育成に関するコンサルティング業務
  6. 不動産の売買、賃貸借、管理及び仲介
  7. 出版業及び印刷業
  8. 前各号に附帯又は関連する一切の事業

このぐらいあれば今までやったこと、当面やりそうなことは網羅できてるかな、と思っています。なにか大当たりの業務を追記して、あわよくば不労所得をゲットしたい!(おっと本音が)

コーポレートサイトも作らねばなので、そちらにはもう少し具体的になにを提供するかを書きます。書かないと。

合同会社設立Tips

設立の手続きはマネーフォワードの会社設立を使いました。選択したのは個人事業主の確定申告をマネーフォワードでやってた、という理由からです。無料だし、押印するだけの提出書類を作ってくれたので手書きをしなくて済みました。よく知らんことだらけなのをステップバイステップで教えてくれたのも助かりました。

実際に登記申請するまでにはいくつかクリティカルパスがあるので、いくら軽率に設立するといっても即日!ってわけにはいきませんでした。これから軽率に設立する人のために、いろいろ記録しておくことにします。

以下、従業員のいないひとり合同会社を設立し、設立者本人が代表社員になるものとします。

マネーフォワードの手順で設立したので、普通に印鑑を作って書面で申請しました。オンライン申請も可能なのですが、Windowsでしか動作しない「統合申請用ソフト」のインストールが必要です。手元にはmacOSしかないので、今回はこれでいいことにします。

必要なアイテム

設立手順とクリティカルパス

設立手順は合同会社の設立を1人で行う流れ・必要書類を分かりやすく解説 | マネーフォワード クラウド会社設立の通りです。実際にログインして入力するフォームのスクリーンショットが使われているので、ほぼこれだと思っておけば間違いありません。そんなに難しいこともないしね。

「必要なアイテム」を準備するのに必要な期間がクリティカルパスになります。これを把握してないと「この日に登記申請( = 設立日に)する」という狙いが外れますので、意識して準備が必要です。

  • 個人の印鑑証明書
    • 印鑑があれば即日(ただし役所の窓口営業時間)
  • 銀行口座
    • 即日?(最近作った記憶がないので)
      • 窓口に行けば即日できそう
      • ネット銀行はタイムラグがある
  • 会社の印鑑
    • 数日〜
    • ここで買ったら注文から到着まで5日だった
  • 出資金
    • 「振込」もしくは「預入」をした、という証明が必要
      • 通帳のコピー or ネットバンキングの画面
    • 最近はネットバンキングで即日振込できないケースもある(セキュリティのため)
      • 住信SBIネット銀行は「同一名義なら即日振込可能」だった
  • 電子定款
    • 2営業日〜
      • 今回は15時に依頼して翌日昼過ぎに届いた
  • 登記申請
    • 申請手続き : 法務局の窓口営業時間
      • 平日の9時から17時、とか
      • どの法務局に申請するかは本店所在地によるので要確認
    • 完了まで : 数日〜1か月程度

登記完了日は、登記申請の窓口に表示されています。今回は8日後でしたが、場所によってはもっとかかるケースもあるそう。書類に不備がなければ特に連絡もないまま完了します。その後の手続き(各所への届出とか、法人口座や法人カードの申請など)は完了後にしかできないので、これもクリティカルパスに織り込んでおく必要があります。

会社設立日は登記申請をした日になります。ですので、窓口が受け付けている平日に限定されます。オンライン申請でも同様に窓口の受付時間に受領されるとのこと。元日に設立することはできないわけですね。

[追記 2024/02/07] 国税庁法人番号公表サイトによると、実際の登録は申請の翌々日(しかも日曜日)にはされていたようです。もっと早く手続きできたな…。ちなみにこのサイトにはAPIもあり、取得したデータを定期的に公開しているサイトも複数あります。なので会社名をググると即出てきてちょっとびっくりします。

設立後の手続き

いろいろやることはあるのですが、必須なのは「税務署への届出」と「都道府県税事務所への届出」です。なにが違うねん!と思って調べたら、税務署は国税、都道府県税事務所は地方税を扱っているとのこと。不動産登記の時も法務局と都税事務所を行ったり来たりしたものですが、法人登記もこれをやるのかーという気持ちです。

必要なアイテム

これらの手続きには「登記事項証明書」と「印鑑証明書」が必要で、印鑑証明書を取得するには「印鑑カード」が必要です。いずれも登記申請が完了したあとでしか申請できません。

ということで、登記申請が完了したらなるはやで法務局に行って必要枚数を発行してくる、がmacOSユーザーとしては最適な行動のようです。オンラインとはなんだったのか…。

各種手続き

登録が完了したら届出ツアーです。macOSでは電子申請はできないので、何事も経験!と思って窓口ツアーしてきました。大雪の翌日で歩きにくいし電車は遅れてるしでもうたいへーん。

ぼくの場合都税事務所・税務署・年金事務所が全部違う場所にあったので、移動時間が結構かかってしまいました。効率よく回るために、事前に記入できる書類は可能な限り準備しておきましょう。マネーフォワードありがたい(年金事務所は再提出になったけど)。

都道府県税事務所への届出
  • 事業を始めたとき・廃止したとき | 東京都主税局
  • 期限 : 設立日から2か月以内
  • 必要書類
    • 法人設立・設置届出書
      • PDFでダウンロードして記入
    • 定款・寄附行為・規約等の写し
    • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の写し
      • 「写し」、つまり法務局でもらったもののコピーでよい
        • 原本を持っていったらコピーして返してくれた
税務署への届出
年金事務所への届出

まとめ

ということでこの記事の時点では、印鑑カード・登記事項証明書・印鑑証明書を手に入れて、税務署と都道府県税事務所への届出までdoneになりました。なかなか面倒だけど学びも多くて、何事も経験よね!という気持ち。しかしもうちょっとデジタル化できないものか。マイナンバーカードの出番がないのも気になりました。

さてこれから本来の目的である「経営の経験」を積まねばなりません。そのためにはお仕事がないと始まりません!お仕事のお声がけお待ちしております!!

ん?お声がけをいただくにはコーポレートサイトとメールアドレスが必要なのでは…。ということはドメインとらないと…。ロゴとかアイコンも欲しいなあ…。こうして準備は続くのでした。

References