【急募】明るい未来

行政刷新会議の「事業仕分け」とは

ニュースなどでご存知かと思うが、現在行政刷新会議が行っている「事業仕分け」。これが今大きな問題になっている。正確に言うと「大きな問題だと思っているし、そう思っている人は決して少なくないように見える」。

なにが問題か。11/13(金)の第3会場で行われたのが、主に先端技術の研究開発についての仕分けだった。スーパーコンピュータの開発、外国人研究者の招聘、日本科学未来館などが対象である。評決結果はこちら(PDF)

この模様はインターネット中継された…のだが、オフィシャルな中継をMacOSXに標準インストールされているソフトウェアで視聴することはできないようになっていた。結局「ケツダンポトフ」というサイトのustream.tvによる中継で見ることができたのだが、この辺のユーザビリティの低さがすでにダメさ加減を露呈しているように思う。

この中継を見ていたtwitterユーザの声を、「#shiwake3」というハッシュタグで検索することで見ることができる。twitterユーザ、という限られた範囲ではあるが、この模様を見ていた人間がどう思ったかを知るには十分な情報量がある。

感想と主張

この中継を1セッション(3-22 WPIプログラム / 学術国際交流事業)聞いての、私の感想と主張を書いておく。こんなところに書いても効果はほぼゼロだろうが、書かないと完全にゼロだ。それよりは幾分マシだろう。

「事業仕分け」の是非について
「仕分け」を行うことには賛成

公共事業の無駄は以前からずっと指摘されていることである。それに対してなんらかのアクションがあった、ということは評価に値する。

また、ユーザビリティの低さはともかくとして「完全公開」としたことも評価したい。

審議の方式が到底受け入れがたい
  • 「まず結論ありき」に見えた

    →公平な審議が充分な時間をもって成されたとはとても言えない。仕分け人が事業の内容を精査しているとも到底思えない。

  • 「仕分け人」の議論に対する姿勢がひどいものだった

    →プレゼンターの発言を平気で遮り、提出された資料には目を通さない。論破されそうになると「もう十分です」と一方的に議論を打ち切ることさえする姿からは、最低限の敬意と分別すら感じられない。

  • 「いい目をしているから」存続?

    前日のニュースより。合理的な審査基準とはとても思えない。

11/13(金)の第3WGについて
審議の結果は国益を大きく損なうものだ

今回審議の対象となった事業は、科学技術の研究開発に関するものが多かった。それらを不可解かつ稚拙な論理で「縮減」「廃止」と切り捨てていく行為そのものが、国益を大きく損なうものだと思っている。

以下、不可解かつ稚拙な論理だと思ったことをいくつか。

  • スーパーコンピュータの開発について「世界一にこだわる必要があるのか」

    →ありとあらゆるアマチュアを否定するひとことではないだろうか。

  • 予算要求に対して「納税者に対してどんなメリットがあるのか」

    →基礎研究はすぐに具体的な成果が出るものではないが、将来的な産業の基礎となるものである。

  • 外国人研究者招聘に対して「世界一の研究をやっていれば勝手に来るだろう」

    →その「世界一の研究」を目指す予算を削減しながら言うのかそれを?

審議を行ったことそのものが技術者 / 研究者の意欲を削ぐものだ

実際に予算削減によるデメリットが出てくる前に、今回の仕分けは「政府が研究開発を重く見ていない」というメッセージを発信してしまっているように思う。そんなメッセージを受けて、研究者の意気があがるとでも思っているのだろうか?

未来科学館について、「どれだけの子供が理科を好きになりましたか?」と聞く。その質問そのものが、子供たちの科学技術への興味と関心をスポイルするものではないだろうか?

まとめ

主張
  • 「事業仕分け」そのものは行うべきである。利権や天下りと言った従来型の無駄を排除することには賛成。
  • しかし、今回開かれたワーキンググループによる議論は拙速であり、重大事項の決定に適切と思われる質を備えていない。特に研究開発の分野においてはデメリットが大きすぎる。
  • なにより「政府が発するメッセージ」としてひどすぎる。技術者の末席にいるものとして、憤慨を覚えずにはいられない。

今回の件で、民主党による政権 / 鳩山首相 / 蓮舫議員を積極的に「支持しない」と考えるに至ったことを、ここに表明しておく。いや、前から支持してないけど。

反駁
「政府に頼ってるだけじゃダメなんじゃないの?」

これはもちろんその通り。しかし、じゃあ政府援助はしなくていいの?という反論をしたい。前述の通り、直接利益を生み出さない性質の研究開発は、政府事業として行わないと存続すら難しい。

バランスと、効率的な使い道が大事だよね!

「プレゼンターが下手すぎるんじゃない?」

確かにプレゼンテーションの質は低かった。事業の重要性 / 必要性をアピールするには、ずいぶんと頼りないものに見えた。

しかし、だからと言って「研究者もアピールできなくちゃダメだよね」という意見には反対したい。

先日行われた「楽天テクノロジーカンファレンス2009」で、KLabのCTOである仙石さんが発言された「餅は餅屋」という言葉に大変感銘を受けたので、ここに引用させていただく。

私の持論は 「餅は餅屋」。技術とビジネスを考える人がいてもいいけど、 24時間技術のことだけを考える人がいて、 24時間ビジネスのことを考える人がいればいい。会社なんだから、 役割分担しつつ進めていくのがいい会社だと

思う。技術者はビジネスのことは考えなくていいから、みんなをアッと言わせることをやろうよ、と。

仙石浩明CTO の日記: パネルディスカッション 〜CTO のから騒ぎ for the future〜 に登壇しました

事業ごとに、ちゃんと「何をやっているのか / どんな成果があるのか」というアピールができるスポークスマン的な存在は必要だと思う。

もし、出てきていたのがそういう立場の人であるとしたら…。それはもう「猛省せよ。プレゼンの訓練をせよ。」と強く申し上げたい。そもそも、何をやってるのか / どんな成果があるのかをきちんとアピールできなかったからこういう場に引っ張り出されたんじゃないのか?という気はする。

さいごに

今回の政権交代で、大きく体制が変わったことは「刺激として」よかった側面はある。しかし、次の選挙まで4年もこのままにしておいたら、この国はいったいどうなるのか。そんな不安が如実に顕在化したできごとだったように思う。

そして、先日読了した「Twitter社会論」に記述があったように、Twitterというプラットフォーム、そしてそこでの発言が健全な「監視機構」として機能するようになるといいな、と思った。

●行政刷新会議ホームページ

http://www.cao.go.jp/sasshin/index.html

●日本科学未来館

http://www.miraikan.jst.go.jp/

●行政刷新会議 「事業仕分け」 評決結果 【第3WG】 11月13日(金) [PDF]

http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov13kekka/3.pdf

●ケツダンポトフ

http://ketudancom.blog47.fc2.com/

●Twitter

http://twitter.com/

●Twitter / Search – #shiwake3

http://twitter.com/#search?q=%23shiwake3

●FNNニュース: 行政刷新会議「事業仕分け」2日目 これまでの合計削減額はおよそ525億円

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00166494.html

●【楽天】テクノロジーカンファレンス2009

http://tech.rakuten.co.jp/rtc2009/

●仙石浩明CTO の日記: パネルディスカッション 〜CTO のから騒ぎ for the future〜 に登壇しました

http://sengoku.blog.klab.org/archives/65154285.html

●楽天テクノロジーカンファレンス2009に参加する: Kwappa開発室

http://kwappa.txt-nifty.com/blog/2009/10/2009-857f.html

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