闇LTでAnovaとCooking for Geeksと低温調理について語ってきた話
手前味噌ですが当blog大ヒット記事まだアクチンの熱変性で消耗してるの? – 低温調理による革命的肉食のすすめ – #ヨーグルティア肉 – Kwappa談話室からはや2年が経過し、低温調理界隈もずいぶん進化しました。
Geekのための知的料理書「Cooking for Geeks」は第2版が出版され(またしてもオライリージャパンさまからご恵贈いただきましたありがとうございます!)、ヨーグルティアにも新型が発売され、そしてAnova Precision Cookerも気軽に買えるようになりました。
そろそろ続編記事を書かねば…と思いながらも忙しさにかまけていたところ、同僚から「闇LTに登壇してくれないか?」というオファーを受けました。テーマは「低温調理と肉について」。いい機会なのでガッと資料を作って発表したところ、なかなかウケたしこうして記事を書くきっかけにもなったし、とてもいいイベントでした(主催者によるレポートはこちら)。
スライドを貼り付けつつ、若干フォローを書いていこうと思いますのでお付き合いください。
うまい肉を食うための科学
だいたいスライドに書いてある通りで、以下の4ポイントを守ればうまい肉を食うことができます。
- ミオシンとアクチン
- ミオシンは変性するがアクチンは編成しない温度で調理するとうまい
- コラーゲンとゼラチン
- コラーゲンが多い(≒硬い)肉は低温で長時間調理しゼラチンに変性させるとうまい
- メイラード反応
- 「きつね色」「こんがり」を味わうためには160〜180℃で短時間調理する
- パスチャライズ
- 低温でも長時間調理することで実質安全なレベルまで菌を減らせる(くれぐれも自己責任で!)
Anova Precision Cooker
「メイラード反応」以外は、「低温」かつ「定温」で「長時間」調理することにより理想的な状態に近づけることができます。前回の記事ではヨーグルティアを紹介しましたが、より大規模高精度で調理できる器具が、Anova Precision Cookerです。
中身は水を加熱するためのヒーター、水を攪拌するためのファン、水温センサーとそれらを制御するマイコンです。Bluetoothで専用スマホアプリと接続し、温度やタイマー0を設定することができます。
2015年のクリスマスシーズンに$179→$129という値下げセールが行われたため、社内外の有志8名で共同輸入したところ、送料込みで19,000円弱で入手することができました。それから徐々に知名度があがったせいか、値下げセールも頻繁に行われ(最安値$99)、日本にも送料$20で発送してくれるようになり、だいぶ入手性がよくなりました。
ギークな料理マニアにとどまらずプロの飲食店でも導入されるようになり、低温調理の認知度も徐々にあがっているようです。鶏胸肉や豚もも肉を低温調理でチャーシューにしたラーメン屋が増えているのですが、食べた覚えがあったりしませんか?
おすすめ肉
スライドの後半は作例紹介になっています。最近お気に入りの調理例をいくつかご紹介します。
牛タン
コストコで真空パックされた状態で販売されています。57.5℃6時間以上調理し、オーブンで350℃10分焼くと、焼肉とも刺身とも違う食感が楽しめます。
また、低温調理したあと周囲をぜいたくにトリミングし、芯の部分を刺身として食べるのもうまいです。
牛イチボ
これもコストコの真空パック。57.5℃8時間以上加熱し、オーブンで350℃10分。脂身に焼き色がつき、内側は完璧なミディアムレアに仕上がります。
ローストを楽しんだ後は内側を細切りにし、下味をつけて卵黄を乗せると合法ユッケができあがります。
ラム肉
またしてもコストコの真空パック。骨つきのフレンチラックは塊のまま59.5℃6時間以上加熱し、骨に沿って切り分けてからフライパンで焼く、という手法でもおいしく食べられます。
骨なしの肩肉も同様に調理するとよいでしょう。
豚肩ロース肉
肩ロースのブロックをジップロックで密閉し(下味はつけない)、62.5℃24時間以上。コラーゲンがゼラチンに変性し、ミオシンは変性していないという理想的な状態に仕上がります。
分厚く切って分厚く衣をつけ、たっぷりの油(ラードだとなおよい)で揚げると、「めしにしましょう」というマンガで「スマホ」と表現されていた、極厚で柔らかいトンカツができあがります。
#cuison-sous-vide
ということで低温調理についてご紹介しました。